面白かった本2019

この記事は日本Androidの会秋葉原支部ロボット部 Advent Calendar 2019の25日目の記事です。

phaさんが毎年「面白かった本20xx」という記事を書いていてとても参考になっているので僕も似たような記事を書いてみようと思います。普段は読書メーターに読書感想文を書いているので、もし気にいっていただけたらフォローしていただけると嬉しいです。

世界を変える「デザイン」の誕生 シリコンバレーと工業デザインの歴史

最終的にはIDEOに所属する人材によるシリコンバレーと工業デザインの歴史と考察です。本書ではHPの関数電卓からの主にソフトウェアを伴う製品の工業デザインについて歴史を外観し、”シリコンバレーはいかにデザイナーにとって恵まれた土地なのか”指摘しています。しかし、この工業デザインの歴史は長いので、予算と決断力さえあれば、当該のメリットは他国でも模倣できると感じた。特に深圳は今後工業デザインにおいて重要な土地になると感じました。もし新興国がかつての日本のように米国の良い点を模倣し続けるなら、シリコンバレーのデザインではない次の強みは何になるのだろうか、とも妄想しました。

ザ・クオンツ 世界経済を破壊シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」

ブラックスワンを読んでから読みました。野球予測など様々な分野の予測手法と現実について切り込む本です。本書はベイズの定理をモデルとして主に採用していますが、現実を説明するモデル一般に本書の警告はあてはまると思いました。本書によればモデルを活用する際、A.過去データを使ってモデルを作り、B.モデルから逸脱したデータが見つかったらモデルを修正します。これは不具合や再発防止についても同様で、Aはいつまでも完璧にならず、Bは必ず発生することになります。Bを完全に防げないからといって、Aつまりモデルを構築して予想/解釈するのをあきらめるのは文明の衰退だと知りました。一方で「再発防止」という言葉を開発現場で使うとき「過去データから予想される範囲の不具合をゼロにする」という意味ではなく、もっと単純に「モジュールの不具合をゼロ件にする」という意味で使うことも散見されるのではないでしょうか。モデルは現実を完全に説明するものではないので、モデルが完全であっても現実を正しく予想できるのではないということを忘れないようにしたいです。

反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

反脆さという指標を導入して統計モデルを狂わせる外れ値であるブラックスワンへの対策を考える随筆です。反脆さは絶対的な指標ではなく脆い対象との比較されます。つまり絶対的に反脆いものは存在せず、例えば #物理学は経済学より反脆い といった表現を伴う少し曖昧な用語です。問題は反脆さを如何にして手に入れるかですが、本書では計画のないランダムな試みを担保することが重要と主張しています。例えば長期的な目標のない会社、計画のない研究もしくは探索といったような。学問が一律の知識を学生に植え付けることも害があることもあると警告していて、教育とは何かについて考えさせられました。

サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

元同僚には”単に仏教での瞑想から仏教色を取り除いたのがマインドフルネスです”と聞いていたので、あまり期待せずに手に取りました。しかしこれが良書で、非常にローコンテクストな表現でマインドフルネスの実際のエクササイズとその効用、そしてなぜ行なうのか、さらには周辺の組織におけるコミュニケーションの問題など幅広い問題への対策になると主張しています。本書では沢山のエクササイズが提示されますが、いきなり全てを独力で身につけるのは大変そうです。まずは一日3分だけ内なる自分を探す瞑想をかかさずやろうと思ったのですが、1/3ぐらいサボっています。これまたどこかの本で読んだのですが「ものごとの因果関係には向きがない」そうです。つまり「体調が悪いから瞑想ができない」のではなく「瞑想をしないから体調が悪い」のかもしれないのです。なんとか習慣化したいところです。

NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版

「サティア・ナデラ氏がマイクロソフトのCEOに就任した時、経営幹部全員に渡した」と聞いて読みました。この手法は、観察する/感情を認識する/必要としていることを明確にする/要求を主張する、というプロトコルに基づいて自分と他者が対話を行ないます。この時、相手の言葉に「共感」することが大事だと本書は主張しています。共感と理解は異なり、相手がこのプロトコルに基づいて対話していない場合においては単に自分が共感するだけでも効果があるとのことでした。自分なりに解釈すると共感とは相手の事柄を追体験することなのかなと感じました。共感力の習熟には鍛錬が必要そうです。

宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 上/下

#時間の正体 というサブタイトルに惹かれてざっくり読みました。エントロピーはほぼ常に増加し、物理学は時間を過去未来両方に対して平等に扱います(対称性がある)。このことからエントロピーは現在から過去に向かっても増大することが確からしいのですが、直感とは異なると指摘します。著者はここでエントロピーがビッグバンから単調に増加していることに話を流すが、飛躍していると感じました。本当に時間だけが一方通行の次元なのかはよく吟味する必用がありそうです。結局本書の段階では時間と空間が分離できないアトミックな要素なのかは決着がついていないようでした。上巻を読んだ時に期待していたインフレーションとは「エントロピーの高い初期宇宙に、10kg程度の空間がゆらぎと斥力によって爆発的に膨張し、インフラトン場で空間を均一に満たし、場の斥力が引力に相転移し、量子ゆらぎを種にして銀河/恒星を作りあげた」という流れのようです。インフレーションの後にビッグバンが起きたんだと勘違いしていました。

日本人の9割に英語はいらない

カフェに置いてあったので”はじめに”と目次を読んで中身をざっくり読みました。最初は「英語教育に対する老害本かな」と思いましたが、最良の英語学習啓発本の1つでした。本題は逆に取れば「日本人の1割であるエリート層には英語が必須」ということになります。つまり「あなたはエリートになる自負がありますか?」と本書の前半で読者に覚悟させて、その覚悟を持った人材だけが本書の後半を読むモチベーションを得られるというしくみです。英語が自分に必要とわかっているなら本書の後半だけ読めば役に立つでしょう。また5章でオススメ本紹介があるのでそこも読みましょう。

21世紀の資本

核となる主張は「資本収益率は常に成長率よりも高くなる傾向がある。これは資本と労働の間に格差を産むことになる。是正には累進所得税などの政策による介入が必要」ということです。本書半分はその論拠を過去のデータから集めています。フランス出身の経済学者であるために本書後半における政策の分析がEUを前提としていて、日本や米国の参考にならない点が気になりました。EUはソビエトにも比類する壮大な社会実験で、経済政策を議論するにはもっとシンプルな国の方が良いのではないでしょうか。過去の常識を小説の中に見出す手法は面白いです。

C++テンプレートテクニック 第2版

泣きながらC++を使うことになってしまった悲しい生物に対して、この言語の難解な機能の一つであるテンプレートについてかなり丁寧に解説してくれる貴重な本です。個人的に仕事でC++を本格的に使わざるをえない状況になり手に取りました。C言語のマクロで黒魔術的にテンプレートのようなものを作っていた20世紀の振り返りから徐々にテンプレートの具体的な使い方を教えてくれます。一方でC++のテンプレートには互換性のためとはいえ罠が多すぎるという感想を改めて持ちました。自分自身のためにコードを書くときに、主体的にC++を選ぶことはないでしょう。

バッタを倒しにアフリカへ

バッタ研究者のモーリタニアでの研究雑記。昆虫に対する知識がなくても純粋なアフリカ旅行記としても楽しめます。30代にして大きな成功を掴んだ著者の努力と能力は素晴しいと感じました。一方でやはり生存者バイアスはあると感じていて #失敗した研究の顛末 も是非読みたいです。 #論文を出すために新発見をするという風潮 というのは全く同感で、そのために今も僕の研究への情熱を冷えてしまっています。バッタの大規模被害が稀にしか発生しないため現地の研究所への資金援助が打ち切られることがありがちという話を聞いてここにも反脆弱性で言うところの #脆さ があると感じました。

地政学の逆襲 「影のCIA」が予測する覇権の世界地図

地政学の観点から世界各国の過去と未来をうらない、”米国は世界の警察として、さらに自国の利益確保のために何をすべきか”提言する本です。主に米朝関係に興味があったのでひろい読みしました。第三部での提言、すなわちメキシコとの隔離が、恐ろしいほどトランプ政権の施策と一致しています。この本の翻訳は2014年出版なので間違いなくトランプは読んだもしくは伝聞したのでしょう。また米国をローマ帝国と比較しているのも冷静な認識だと感じました。米国がローマの第二段階に撤退しながら外交によってユーラシア大陸への影響を維持することができるのか、動乱の時代が待つのか。やはり未来予測は難しいと感じました。

巨大システム 失敗の本質: 「組織の壊滅的失敗」を防ぐたった一つの方法

今年読んだ本の中で一番興味深かったかもしれません。規模の大きさにかかわらず”システム”が失敗する要因と対策を紹介する本です。また本書の多くの部分はソフトウェアと無縁なシステムが失敗する例が掲載されていて、ソフトウェアエンジニアには新鮮です。本書によるとシステムは”密結合”と”複雑な相互作用”の強度のによって分類できるとしていて、この両者が強い場合には失敗の被害が大きくなるとしています。(多くの場合ソフトウェアによって)この強度が増大する傾向があるというのも自分の実感と一致しました。対策手段も紹介しているが失敗の低減はできても、根絶することは難しいと感じます。それでも本書が提案する簡易な防止策は様々なシステムで役に立つでしょう。脚注の参考文献も参照。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください